1/02/2017

ニューロダイバシティについての理解を深める

Edgeに掲載された伊藤穰一氏のエッセイ。自閉症、ADHC、統合失調症は脳の個性であって障害ではない。

ニューロダイバシティ

人間は神経学的状態において多様性を有する。自閉症のようなものは障害と考えられているが、多くの人はヒトゲノムの正常な変化の結果だと主張している。ニューロダイバシティ運動は、自閉症は治癒する必要はなく、保護されるべきれっきとした人間の多様性の一形態であると主張する国際的な公民権運動である。

1900年代初め、遺伝的に劣ると考えられる人々への優生学や不妊手術は、セオドア・ルーズベルト、マーガレット・サンガー、ウィンストン・チャーチルや米最高裁判事オリバー・ウェンデル・ホームズ・ジュニアのような擁護者にとって科学的に認められる考えだった。優生学運動に刺激されたホロコーストの恐怖は、それを実践した場合にこれらのプログラムが的確であるという危険性や精神的打撃は明らかである。

自閉症やニューロダイバシティの擁護者テンプル・グランディンは、アルベルト・アインシュタイン、ヴォルフガング・モーツァルト、ニコラ・テスラが今日生きていいれば、「自閉症スペクトラム」と診断されいたと主張する。彼女は「自閉症の特質が無ければ、我々はまだ洞窟で暮らしていたかも知れない」と自閉症が長く人間の発展に寄与して来たとも信じている。今日では、非定型発達の子供はしばしば従来の教育システムの中で治療プログラムを通じて苦痛を感じており、結局は後で天才だったと分かっている。これらの子供の多くは結局はMITや他の研究機関に落ち着いている。

CRISPRの発見で、突然大規模なゲノム編集が実現可能になった。開発中の最初の応用は、衰弱性疾患の原因となる遺伝子変異の修正させ、自閉症だけでなく、人間社会に繁栄をもたらす多くの多様性も取り除く可能性の道をもたらしている。我々のヒトゲノムへの理解はまだ初歩段階で、知性や性格のようなものを含む複雑な変化を起こすまでにはまだ時間が掛かる。しかもそれは危険を伴うものである。私は数年前にあるビジネスプランに出会い、それは自閉症はゲノムの中の単なる「エラー」に過ぎず、ぼやけた写真あるいは音声録音の雑音除去の方法で特定して訂正できると主張していた。

自閉症で生まれてきた一部の子供には明確に治療介入が必要な状態があり、衰弱する問題を抱えている。しかし、矯正あるいは最終的には遺伝子工学を通じて自閉症を治療しようとする試みは、知識、イノベーション、芸術、健康な社会の多くの要素を推進する神経学的な多様性の根絶につながる可能性がある。

我々は多様性が健康なエコシステムにとって極めて重要だと分かっている。我々は農業の単一栽培がいかに壊れやすく持続不可能なシステムか知っている。

私の懸念点は、たとえ神経学的多様性が社会にとって極めて重要であることを解明し理解したとしても、標準から逸脱した危険な特質を取り除くよう設計されたツールを開発するのではないかと心配している。そして、選択で与えられると、人々は定型発達な子供を選ぶ傾向がある。

我々は身体障害や病気を取り除くために遺伝子工学への道を突き進むにつれ、科学的に洗練されてはいるもののこの道は意図しない不可逆的な結果や副作用の可能性があることを、それが起こる前に気付くことが重要である。

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